技術者がその技能を生かして、「独立」するということを考えたことがあるでしょうか。ここでいう「独立」とは、いわゆる、起業、を指します。おそらく、企業に勤めるほとんどの、しかも中堅以上の技術者の方は「独立、起業」ということを考えたことがあるのではないでしょうか。理由はさまざまでしょう。組織がイヤになったという理由もあるでしょうし、画期的なアイデアを思いついたとか、「俺の給料はもっと高いはずだ!」と思ったり、はたまた、家庭の事情で、など、など。
 しかし、企業に勤める技術者にとって、独立への道は険しいと言わざるおえません。まず、いくら自分に技術があるとか、画期的な製品開発ができる、とか言っても、それがどのような「環境」で実現されているかを冷静に見る必要があります。あなたの職場には、高価な測定器や工具があるでしょう。また、WEB接続はもちろん、ネットワークも完備していることでしょう。パソコンやアプリケーションソフトウエアも会社から支給され、おろらく定期的なバージョンアップも行われていることでしょう。さらに、あなたが設計した製品、その筐体を作ったり、梱包箱を作ったり、ドキュメント、規格認証、製造、検査、出荷、そして回収(売上)など、じつにさまざまな業務の上に成り立っていることが分かります。これら、すべての結果として、あなたの優れた技術が生かされていることを認識しなければなりません。
 次に、シミュレーションをしてみましょう。あなたが独立して、「技術」を生かした会社を作るとします。退職金を元手に有限の資金で起業するわけです。会社設立登記や税務署、市町村への開業届け等、これらは決められた通りにできることでしょう。比較的低額の料金でこれらを代行してくれるサービスも、ちょっと検索すればいくらでも出てきます。事務所も借りて、社長デスクも設置、さあ、開業です。
 ここから現実の壁が立ちふさがってきます。極めて、単純な問題が明らかになってきます。
「ところで、俺は、何をするんだ?」
 ここが一番大事なところです。「何をするんだ?」というのは、言い換えてみると、「どうやって、稼ぐんだ?」ということです。要するに、ビジネススキームです。自分の技能、経験、人脈を生かして、誰から(どこから)、何の対価として、どうやってお金をいただくか、という部分が非常に大切になります。当然、昨日までサラリーマンをしていた技術者がそのすべてに対して完璧な回答が出せるはずもありません。しかし、独立したとなると、否応なしに、それらに対して向き合っていかなければなりません。そこで、独立前に必ずやっておかなければならないことがあります。それは、自分にできること(得意なこと)とできないこと(不得意なこと)を明確に挙げておくことです。そして、自分の目標とするビジネスに対して、自分でできないことに対する解決策をあらかじめ用意しておかなければなりません。「電子回路設計」は得意という方は、たとえば、「電子回路設計」でお金がいただけるのかを知る必要があります。一般的には、「設計」そのもので収入が得られるのは建築設計のような、限られた業種だけでしょう。では、「電子回路設計」でお金をいただくにはどうすればよいか。最終的には、その設計を現実の物(商品)にしなければなりません。

 その過程になにが必要か、自分は一連の工程の中のなにができるのか、何ができないのか、それらを明らかにしていく必要があります。