「俺の若いころは・・・」なんて言うと、若い技術者の皆様に嫌われてしまいそうですが、今日は技術開発における「視野」についてお話します。要点は、最近の高度な技術革新の世界にいると、視野がどんどん狭まっていってしまっているのではないかと思うときがあります。具体的に言うと、開発者の専門分野が細分化され、そこから外れた分野への視点が欠けてしまうことがあります。簡単な例で言うと、ハードウエアとソフトウエア。今時の電子機器はマイクロプロセッサが搭載されているのはごく当たり前になっています。メーカーでは一般的に、ハードウエア技術者(「ハード屋さん」)とソフトウエア技術者(「ソフト屋」さん)がそれぞれ分担して製品開発にあたることが当たり前でしょう。確かに、専門性を高め、職務を細分化していくことは効率的な開発につながるのは事実でしょう。

 が、こういう開発現場で、必ず発生するのが、「ハードが遅れているからソフトが進められない」、「ソフトがバグっているからハードが動かない」というという双方のぶつかり合い。製品開発が大詰めになって、上司からスケジュールの確認や催促が始まるころには必ず起こる現象ではないでしょうか。それぞれの担当技術者は、相手の業務に疑念を抱き始め、最悪の場合は人間関係の悪化に発展してしまう。また、それを統制できjない上司を責めたりすることもあるでしょう。

 こういうことは筆者の在職時にもよくあったことです。そのとき、いつも思い知ることは、プロジェクト開始時の「視野」なのです。プロジェクトを管理するリーダーの「視野」の広さが業務遂行のカギを握っているのです。はじめにハードウエア、ソフトウエアの業務分担をする時に、製品に求められる機能・性能を、適切に分担させたか、その担当者の技量、正確を適切につかんでいたか、あるいは、顧客の要望、営業の要望、自社の技術の限界、そして、開発経費とのバランス、たくさんのことを考慮していかなければなりません。これらの広い観点(視野)からプロジェクトを眺めることができるかがカギとなっていきます。

 担当技術者はどうしても、その業務に集中するあまり、「視野」がせまくなっていきます。「視野」がせまくなった技術者同士が前述のようなぶつかり合いを起こしてしまいます。が、少しでも、ハードウエアを理解するソフトウエア技術者あるいはソフトウエアを理解するハードウエア技術者同士であったなら、お互いの事情を察知し、円滑に業務を進めていくことができるのではないでしょうか。

 リーダーはリーダーのレベルで、担当技術者は担当技術者のレベルで常に広い「視野」を持ち、その「視野」全体から自分の行動を規定し、是内としてバランスよく業務を遂行していければ気持ちの良いお仕事ができるのではないでしょうか。技術者が広い「視野」を持つために必要なことは「好奇心」です。たとえ、自分の専門分野でなくても、他の技術者の持つ技術に興味を持ち、理解しようとする態度が必要です。日ごろのそんな心構えが、いざといいときに力を発揮するものなのです。

 冒頭の「俺の若いころは・・」というくだりですが、数十年前の技術開発現場おいては、ハードウエア技術者だとか、ソフトウエア技術者だとか、そんな明確な区切りはありませんでした。TTLを使って、お手製のコンピュータ(もどき)を作るときは、ロジック回路設計もり、マイクロプログラミングもあり、はたまた、収納するケース(箱)の設計もやったり、そんな時代でした。昔のことはまた別の機会に・・。

 いつの時代になっても、開発のスタイルが違っても、自分の担当分野以外にも目を向けていくことが、最終的には自分の技能を高めることにつながっていくのです。常に、広い「視野」をもつことが肝心です。